Go で学ぶ TDD チュートリアル — t_wada 式 5 ステップで体感する Red/Green/Refactor
t_wadaさんが定義したTDDの5ステップをGoの実装で追体験します。テストリストの作成からリファクタリングまで、シンプルなFizzBuzzを題材にTDDのリズムを身につけましょう。
TL;DR
- t_wadaさんによるTDDの5ステップ定義をGoコードで体験できます
- テストリスト → Red → Green → Refactor のリズムを、FizzBuzzを題材にしながら段階的に身につけられます
go testだけで完結するシンプルな環境で、TDDの思考プロセスを追体験できます- リファクタリングを「テストが通った後にやること」として意識できるようになります
はじめに
「TDDってなんとなく知っているけど、実際にどう進めればいいかわからない」と思っていませんか?
本記事では、t_wadaさんのポストで定義されたTDDの5ステップを、GoのシンプルなFizzBuzz実装を題材に追体験します。TDDは「テストを先に書くだけ」ではなく、テストリストという設計行為からはじまるリズムです。そのリズムを体感することを目標にしてみましょう。
1. TDDの5ステップを理解する
t_wadaさんの定義を整理すると、TDDは以下の5ステップで構成されます。
- 押さえておきたいテストシナリオを洗い出し、テストリストにまとめる
- テストリストの中から「ひとつだけ」選び出し、失敗するテストコード(Red)に翻訳する
- プロダクトコードを変更し、テストを成功させる(Green)
- 必要に応じてリファクタリングを行い、設計を改善する
- テストリストが空になるまでステップ2に戻って繰り返す
Mermaidで流れを図示します。
flowchart TD
A[テストリストを作る] --> B[リストからひとつ選ぶ]
B --> C[失敗するテストを書く<br>Red 🔴]
C --> D[プロダクトコードを書く<br>Green 🟢]
D --> E[リファクタリング<br>Refactor 🔵]
E --> F{テストリストは空?}
F -->|No| B
F -->|Yes| G[完了 🎉]
つまり、TDDの本質は 「何を作るかのリストを管理しながら、小さく回し続けること」 です。
2. 環境構築
本記事で使う環境は以下の通りです。
| 項目 | バージョン |
|---|---|
| Go | 1.22以降 |
| テストフレームワーク | 標準 testing パッケージのみ |
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go version
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go version go1.22.0 darwin/arm64
プロジェクトを作成します。
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mkdir tdd-fizzbuzz && cd tdd-fizzbuzz
go mod init example.com/fizzbuzz
この記事はサードパーティのテストライブラリを一切使いません。標準の
testingパッケージだけで、TDDのリズムは十分体験できます。
3. ステップ1 — テストリストを作る
コードを書く前に、まずテストリストを作ります。これはTDDにおける「設計の最初の一手」です。
FizzBuzzの仕様は以下の通りです。
- 3の倍数なら
"Fizz"を返す - 5の倍数なら
"Buzz"を返す - 15の倍数なら
"FizzBuzz"を返す - それ以外は数字をそのまま文字列で返す
この仕様からテストリストを起こしてみます。コメントファイルとして管理するのが最もシンプルです。
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// TODO テストリスト
// [ ] 1 を渡すと "1" を返す
// [ ] 3 を渡すと "Fizz" を返す
// [ ] 5 を渡すと "Buzz" を返す
// [ ] 15 を渡すと "FizzBuzz" を返す
// [ ] 6 を渡すと "Fizz" を返す(3の倍数)
// [ ] 10 を渡すと "Buzz" を返す(5の倍数)
テストリストはコードである必要はありません。紙やメモ帳でも構いません。大切なのは「今自分が何を作ろうとしているかを明示すること」です。
4. ステップ2〜5 — Red / Green / Refactor を回す
4-1. 最初の1件:「1 → “1”」
テストリストから最もシンプルなものを選びます。「1を渡すと “1” を返す」 から始めましょう。
Red 🔴 — 失敗するテストを書く
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package fizzbuzz_test
import (
"testing"
"example.com/fizzbuzz"
)
func TestFizzBuzz_普通の数字(t *testing.T) {
got := fizzbuzz.FizzBuzz(1)
want := "1"
if got != want {
t.Errorf("FizzBuzz(1) = %q, want %q", got, want)
}
}
この時点では fizzbuzz パッケージが存在しないのでコンパイルエラーになります。これが Red の状態です。
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go test ./...
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cannot find package "example.com/fizzbuzz"
Green 🟢 — テストを通す最小限のコードを書く
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package fizzbuzz
import "strconv"
func FizzBuzz(n int) string {
return strconv.Itoa(n)
}
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go test ./...
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ok example.com/fizzbuzz 0.001s
Refactor 🔵 — 改善の余地は?
この時点では実装がシンプルすぎるため、リファクタリングは不要です。テストリストを更新します。
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// [x] 1 を渡すと "1" を返す
// [ ] 3 を渡すと "Fizz" を返す
// ...
4-2. 2件目:「3 → “Fizz”」
Red 🔴 — 失敗するテストを追加する
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func TestFizzBuzz_Fizz(t *testing.T) {
got := fizzbuzz.FizzBuzz(3)
want := "Fizz"
if got != want {
t.Errorf("FizzBuzz(3) = %q, want %q", got, want)
}
}
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go test ./...
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--- FAIL: TestFizzBuzz_Fizz (0.00s)
fizzbuzz_test.go:XX: FizzBuzz(3) = "3", want "Fizz"
FAIL
Green 🟢
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func FizzBuzz(n int) string {
if n%3 == 0 {
return "Fizz"
}
return strconv.Itoa(n)
}
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go test ./...
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ok example.com/fizzbuzz 0.001s
「最短でテストを通すコード」を書くことが Green フェーズの目的です。きれいに書こうとするのは Refactor フェーズまで我慢しましょう。
4-3. 3件目:「5 → “Buzz”」
Red 🔴
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func TestFizzBuzz_Buzz(t *testing.T) {
got := fizzbuzz.FizzBuzz(5)
want := "Buzz"
if got != want {
t.Errorf("FizzBuzz(5) = %q, want %q", got, want)
}
}
Green 🟢
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func FizzBuzz(n int) string {
if n%3 == 0 {
return "Fizz"
}
if n%5 == 0 {
return "Buzz"
}
return strconv.Itoa(n)
}
4-4. 4件目:「15 → “FizzBuzz”」
ここが重要なポイントです。15は3でも5でも割り切れるため、判定の順序が問われます。
Red 🔴
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func TestFizzBuzz_FizzBuzz(t *testing.T) {
got := fizzbuzz.FizzBuzz(15)
want := "FizzBuzz"
if got != want {
t.Errorf("FizzBuzz(15) = %q, want %q", got, want)
}
}
現在の実装では n%3 == 0 に引っかかり "Fizz" を返してしまいます。
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--- FAIL: TestFizzBuzz_FizzBuzz (0.00s)
fizzbuzz_test.go:XX: FizzBuzz(15) = "Fizz", want "FizzBuzz"
Green 🟢
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func FizzBuzz(n int) string {
if n%15 == 0 {
return "FizzBuzz"
}
if n%3 == 0 {
return "Fizz"
}
if n%5 == 0 {
return "Buzz"
}
return strconv.Itoa(n)
}
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go test ./...
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ok example.com/fizzbuzz 0.001s
Refactor 🔵 — テーブルドリブンテストに整理する
ここで立ち止まってみましょう。テストコードを見ると、同じ構造の関数が並んでいます。Goのイディオムであるテーブルドリブンテストにリファクタリングしましょう。
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package fizzbuzz_test
import (
"testing"
"example.com/fizzbuzz"
)
func TestFizzBuzz(t *testing.T) {
tests := []struct {
name string
input int
want string
}{
{"普通の数字", 1, "1"},
{"3の倍数", 3, "Fizz"},
{"5の倍数", 5, "Buzz"},
{"15の倍数", 15, "FizzBuzz"},
{"3の別の倍数", 6, "Fizz"},
{"5の別の倍数", 10, "Buzz"},
}
for _, tt := range tests {
t.Run(tt.name, func(t *testing.T) {
got := fizzbuzz.FizzBuzz(tt.input)
if got != tt.want {
t.Errorf("FizzBuzz(%d) = %q, want %q", tt.input, got, tt.want)
}
})
}
}
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go test ./... -v
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=== RUN TestFizzBuzz
=== RUN TestFizzBuzz/普通の数字
=== RUN TestFizzBuzz/3の倍数
=== RUN TestFizzBuzz/5の倍数
=== RUN TestFizzBuzz/15の倍数
=== RUN TestFizzBuzz/3の別の倍数
=== RUN TestFizzBuzz/5の別の倍数
--- PASS: TestFizzBuzz (0.00s)
ok example.com/fizzbuzz 0.001s
リファクタリングは「すべてのテストが Green の状態」でのみ行います。テストが失敗している状態でリファクタリングをしてはいけません。
Refactor 🔵 — プロダクトコードも整理する(任意)
プロダクトコードも少し整理してみます。
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package fizzbuzz
import "strconv"
func FizzBuzz(n int) string {
switch {
case n%15 == 0:
return "FizzBuzz"
case n%3 == 0:
return "Fizz"
case n%5 == 0:
return "Buzz"
default:
return strconv.Itoa(n)
}
}
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go test ./...
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ok example.com/fizzbuzz 0.001s
引き続き Green を維持できています。
5. テストリストが空になったら完了
最終的なテストリストを確認します。
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// [x] 1 を渡すと "1" を返す
// [x] 3 を渡すと "Fizz" を返す
// [x] 5 を渡すと "Buzz" を返す
// [x] 15 を渡すと "FizzBuzz" を返す
// [x] 6 を渡すと "Fizz" を返す(3の倍数)
// [x] 10 を渡すと "Buzz" を返す(5の倍数)
すべてチェックが入りました。ステップ5の「テストリストが空になるまで繰り返す」が完了です。
6. 最終的なコード全体
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package fizzbuzz
import "strconv"
func FizzBuzz(n int) string {
switch {
case n%15 == 0:
return "FizzBuzz"
case n%3 == 0:
return "Fizz"
case n%5 == 0:
return "Buzz"
default:
return strconv.Itoa(n)
}
}
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package fizzbuzz_test
import (
"testing"
"example.com/fizzbuzz"
)
func TestFizzBuzz(t *testing.T) {
tests := []struct {
name string
input int
want string
}{
{"普通の数字", 1, "1"},
{"3の倍数", 3, "Fizz"},
{"5の倍数", 5, "Buzz"},
{"15の倍数", 15, "FizzBuzz"},
{"3の別の倍数", 6, "Fizz"},
{"5の別の倍数", 10, "Buzz"},
}
for _, tt := range tests {
t.Run(tt.name, func(t *testing.T) {
got := fizzbuzz.FizzBuzz(tt.input)
if got != tt.want {
t.Errorf("FizzBuzz(%d) = %q, want %q", tt.input, got, tt.want)
}
})
}
}
まとめ
本記事で体験したTDDの流れを振り返ります。
- テストリストを先に作ることで、「何を作るか」を明確にしてから実装を始められます
- ひとつずつ選んで Red → Green → Refactor を回すことで、常に動く状態を保ちながら進められます
- Green になってからリファクタリングするというルールを守ることで、安全に設計を改善できます
- テストリストが空になることがゴールであり、進捗の可視化にもなります
TDDはテスト手法というより開発のリズムです。最初は窮屈に感じるかもしれませんが、慣れてくると「次に何をすべきか」が常にクリアな状態で開発できる心地よさが出てきます。ぜひ日々のGoコードで試してみてください。